中核救急病院、2年で174カ所減 搬送遅れの要因に(朝日新聞)

http://www.asahi.com/life/update/0113/OSK200801130038.html

 地域の救急患者を受け入れる中核的存在の「2次救急病院」が、この2年間で174カ所減ったことが、朝日新聞の全国調査でわかった。深刻化する医師不足や経営難が影を落とした結果、減少傾向が加速しており、新たに救急を掲げる病院がある一方、救急の看板を下ろしたのは、2年間で全体の5.6%にあたる235カ所に上る。急患の収容先選びが困難になり、搬送遅れが続発するなど市民生活への打撃は大きい。国の医療費抑制政策が救急医療の根幹を揺るがしている実態が、色濃く浮かんだ。
(中略)
 全国の2次救急病院は05年10月時点で4170カ所あったが、2年後には3996カ所となり、174の純減。救急対応をやめた235カ所に加え、21カ所が3次救急に移行するなどした一方、新たに82カ所が2次救急病院になった。04年以前のデータがある自治体の多くで、05〜07年の年間減少数がそれ以前を上回り、減少率が高まっている。
(後略)

「診るのがいやなら救急の看板をはずせばいいじゃない」って論調のBLOGは結構あったが、何のことはない。そんなことを言われなくてもわかってるよ、というニュース。
2次救急の輪番に入ることで得られる補助金は実は雀の涙。確か北海道新聞で出してた記憶がある。年間数百万〜多いところでも4000万だったはず。(後記:大阪の報道等を見るとどうやら桁が違う。数十万から数百万らしい。曖昧な記憶でものを書くものじゃないな。「病院が欲しい金額」だっただろうか、俺の記憶は)
「むちゃくちゃ多いじゃないか」と思う貴方。ちょっと考えてみてほしい。まともに救急をやるのにどれだけ金がかかるか。最低でも医者一人(当直医は労働基準法上は救急を診れない)、看護師一人、事務員一人は必須だ。これを365日維持する。日勤が8時間だから、それ以外のEXTRAの労働時間は16時間。それだけでも医者二人、看護師二人、事務員二人分の人件費が生じる。さらに、これは「残業扱い」になるから割増賃金が発生する。4000万でもおそらくトントン、数百万では大赤字だ。患者からの医療費? 外来で点滴するだけの患者が大部分の「救急」で穴埋めにはならない。
だから病院は今まで救急のための人員を追加では用意せず、当直医・病棟看護師の仕事を増やすことで対応した。そうすればコスト削減になるし、「地域からの要請」にも応えられるからだ。だが近年状況が変わってきた。
まず医師の認識が変わった。今までは救急でバリバリ働くことが一種のステイタスであった。しかし昨今のトンデモ訴訟で救急を嫌がる医師が増えた。そのような医師は救急をやってる病院から救急をやらない病院へと移動する。するとどうなるか。当直医に救急をやらせることで生じた「コスト削減」をはるかに上回る「収入減少」が病院に生じた。病院にもトンデモ訴訟の影響は生じる。病院も患者に訴えられ、さらに負けているからだ。単純にリスクを考えたとき、救急をやる理由はなくなっていた。
かくして救急病院は減っていったのだと考える。最近の「たらい回し」報道を見ても、最初っから救急指定病院になってない病院は叩かれていないし、救急隊も要請していないことが多い(多いって書いたのは、兵庫で「ビル診」に救急搬送依頼したという報道があったから。普通ビル診は救急告示はしていないだろうから単純に消防隊のミスなんだろうけど、報道によって風評被害は出ただろう。まあ、これは運の悪いパターン、http://ssd.dyndns.info/Diary/2007/12/post_440.html#commentsコメント欄参照(ssd様BLOG))。「訴えられるのがいやなら病院を辞めればいいじゃない」になるのはいつの日かね。そういや「救急患者を診るのがいやなら(救急)医をやめればいいじゃない」ってのもあったな。