研修医、拠点病院に集約 修了後へき地に 政府与党検討(朝日新聞)

http://www.asahi.com/life/update/0518/TKY200705180326.html
予想通りっちゃあ予想通りなんだけど。

 政府・与党は18日、医師の不足や地域間の偏在を解消するため、大学卒業後の研修医の受け入れ先を地域の拠点病院に限定し、拠点病院にへき地への若手医師派遣を義務づける方向で検討に入った。従来、医師を割り振る役割を担ってきた大学医学部が、04年度の新しい臨床研修制度の導入をきっかけに機能しなくなってきたため、地域医療の中心になる拠点病院に代替させる狙いだ。

とりあえず、臨床研修制度の導入すれば医局制度の崩壊は避けられないと医師側が言っていたのは無視ですか?(むしろそれを目的と声高に述べたマスコミすらあった)。まるで、想定外の自体みたいな書き方ですが。

 政府・与党は、現在年1万1300人分ある研修医の定員総枠を、研修医の総数8600人程度に削減することを検討。都市部を中心に定員枠を大幅に削減することで、地方への研修医の流入を促進するとともに、受け入れ先を地域の拠点病院に限定する。

 そのうえで、拠点病院に対して、研修の終わった若手医師を医師不足が深刻な地域に派遣することを義務づける。勤務を終えた医師には拠点病院でのポストを約束することで、若手医師の理解を得たい考えだ。都道府県が条例などで拠点病院に医師派遣を義務づけられるようにし、医師の供給を確実にすることを目指す。

どうして厚労省はムチしか考えないのだろうねえ。医師を僻地に送り出せるほど余裕のある病院は都会含めて日本にはないというのが僕の認識なんですが、厚労省はどうやらそうは考えていないらしい。
そんな理由で拠点病院のポストにしたって医師にとってはそれほどのメリットではない。だって大抵の病院には医師が足りていないんだもん。
厚労省が心を入れ替えて医師の大幅増に踏み切るのならまだしも、このままだと初期研修を終えた研修医が「僻地に派遣されない」病院に流れ出すことすら考えられる。後期研修はいま義務化されてるわけではないし。
きっと医師に直接義務付けすることは職業選択の自由なんかが関連してできなかった、だから病院に義務付けすることにしたと推測するけど、読んだだけで抜け道が判明するような小賢しい手では医療崩壊は避けられないと思うなあ。

それ以外にも

  1. いやいや僻地に派遣された医師は、きっと労働条件で闘争するだろう。契約が9時5時なら、5時にぴたっと勤務をやめるだろうね。そういう契約なんだから。
  2. 当然当直で救急は見ないだろう。だって当直業務ではないから。僻地病院が潰れようとも「拠点病院のポストが約束されているなら」派遣される医師には関係ないかもしれない。
  3. 更にマイナー科への転向が進む恐れがある。マイナー科は僻地とはいってもそこそこの町でないと病院自体がないから、結果としてド僻地での勤務は避けられる。

はっきりいって、この政策は医療崩壊への最後の後押しにしかならないと断言できる。
医局制度は悪いところもあったけど、いいところもあったと思う。仲間意識があったから医師も無茶はしなかったし、条件が悪い病院からは引き上げてもらうこともできた。政府が素の取りまとめをするとしたら、そんないいところは消えうせてしまうんだろう。

http://blog.m3.com/TL/20070518/1/

 独立行政法人国立病院機構(矢崎義雄理事長)が、標準医師数を下回る機構内の病院で診療報酬が減額されるのを避けるため、昨年9月に開始した「緊急医師派遣制度」が約半年で中止を余儀なくされていたことが分かった。派遣対象は東北地方の3病院のみだったが、医師が派遣されるのを拒み、調整がつかないケースなどが相次ぎ、継続は難しいと判断した。政府・与党が検討している医師確保策の行方にも影響を与えそうだ。

ちなみに国立病院機構は失敗している。ポストはメリットになるのかねぇ?(僕はならんと思うが)。