脇の甘いのはお互い様かも知れない

呼吸器外しに関して、一旦つけたものは僕は何があっても外さない。
じゃあ、つけるつけないの選択肢はどうなのか、これ実は結構ナイーブな問題だったりする。

今いる病院は癌末期患者が多くて、いよいよの際に挿管するなんてもってのほかだ。
だから入院時に急変時の確認を、主に家族にとっている。「家族に」というのは、本人が告知されていない場合も多いから。紹介元でも家族にだけ話がされていて、家族が告知を希望されない場合、本人には話ができない。
その際に「急変時、蘇生処置を希望しません」と書面でもらっているんだけど、全親族から意見をもらうことなんて不可能。

いまはうまいこといってるけど、突然遠い親族が「見殺しにした」といってくる危険性を完全に除外することはできず、最悪の場合、その書面が殺人の証拠にだってなりうる・・・。
急変は家族にとって相当ショックらしくて、一旦話をしていてもいざその場になって「できることをしてください」といわれることはあるし、その結果蘇生処置をしたこともある。

「あの時はサインしたけど、急変の際にやっぱり挿管して欲しいと思った。だけど主治医は聞き入れてくれなかった」

そんな嘘をもし家族に言われたとき、自分の身を守れるだろうか?

医師が一番ラクなのは「全例挿管、死ぬまでつけっぱなし」なのかもしれない。所詮死人に口なし。いい意味でも、悪い意味でも。家族のコントロール技術は医師の必須知識。
何人かの家族に聞けば一人ぐらい「できることをしてください」って家族はいるし、その時点で延命治療は必須に変わる。拒否する家族は殺人教唆罪。少なくとも今の法制度はそっちを支持している。

厚労省も、医師も、看護師も、もちろん大多数の家族もそれで利益はないけど、だれもとびぬけた被害者にはならない。
今回の件で法制度が改正されればいいけど、たぶん無理だろう。選挙前だし。