報道の仕方によって感想が変わる例

2007/06/14-00:44 人工呼吸器外れ、患者死亡=安曇野赤十字病院−長野
 長野県安曇野市安曇野赤十字病院(荻原廸彦院長)は13日、入院中の60代後半の女性患者の気管支から人工呼吸器のチューブが外れ、死亡する医療事故が起きていたと発表した。安曇野署は業務上過失致死の疑いもあるとみて捜査している。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007061400017
これが第一報。挿管チューブを自己抜去されて低酸素血症になったのかなー。呼吸器のアラームは鳴らなかったのかなー。って思った。で、続報が下。

安曇野赤十字病院で医療事故

 安曇野市安曇野赤十字病院(荻原廸彦院長)は13日、入院中の60代後半の女性患者が10日、挿入されていた人工呼吸用の管が気管支から外れ、容体が急変して死亡する医療事故があったと発表した。医療ミスの有無は判明していない。同病院は安曇野署に事故を届け出ており、同署は業務上過失致死も視野に入れて捜査している。

 同病院によると、女性患者は5月下旬、心筋梗塞(こうそく)で運ばれ、自力で呼吸できないため、人工呼吸器を装着。人工呼吸器と気管支を「気管カニューレ」と呼ばれる管でつないで呼吸を維持していた。

 しかし、10日午前1時10分ごろ、患者の気管支から管が外れかかっているのを看護師が発見した。看護師は、これ以上管が外れて酸素が体内に運び込まれない状態が起こらないように管を手で押さえるとともに担当医師に連絡。約10分後に駆けつけた医師が再度、気管内に管を挿入し直したが、患者の容体が急変し、死亡した。

 同病院では、院内に事故調査委員会を設置。荻原院長は「病院としてはこの事故の中に瑕疵(かし)があるかどうかを検証し、遺族に誠実に対応していきたい」と話した。

 同病院では平成12年9月、患者を取り違えて別の患者に注射するなどの医療ミスを起こしている。

(2007/06/14 03:42)

http://www.sankei.co.jp/chiho/nagano/070614/ngn070614001.htm
これだと話が変わってくる。外れそうなのをこの病院の看護師はちゃんと未然に察知。挿管しなおしたが患者が死亡した。

  • 再挿管に何か問題があったのか
  • 再挿管関係なしに患者の状態が急変したのか

はこの記事からは分からない。記事はきっと前者を念頭において考えているんだろうけど、分からんよね。

さらに、記事に細かい突込みを入れるとすれば

  • 本当に「気管支」にチューブが入っていたら問題だね。入れるべきは「気管」
  • 担当医師は午前1時にもかかわらず10分で到着から挿管までやったんだね。すばらしい。5月下旬入院だからさすがに担当医師は泊り込みしてないだろうし、たまたま当直だったのかね。でも10分ですべてやれたってのはすばらしいね。
  • この事件と平成12年の事件は「まったく」関係ないよね。それとも今後産経新聞は「医療ミスの可能性が否定できない」事件を報道するときは、それ以前にその病院で起こった医療ミスを全てその度に報道していくのかね。

ってことがあるかな。

さらに続報。

安曇野日赤で医療事故 女性患者の気管から器具抜ける

6月14日(木)

 安曇野赤十字病院安曇野市)は13日、人工呼吸用に首から挿入して取り付ける器具「気管カニューレ」を使用していた入院患者が、器具の先端が気管から外れた後に死亡する事故があった、と発表した。死亡したのは10日。同病院は医療事故調査委員会で原因を調査中で、13日会見した荻原廸彦院長は「医療過誤があるのかは今、検証している」と述べた。

 届け出を受けた安曇野署は業務上過失致死容疑も視野に調べている。

 患者は中信地方に住む60代後半の女性で、心筋梗塞(こうそく)などで5月下旬に入院。危険な状態となったため一時、信大病院(松本市)へ転院した。その際、信大は、患者に、のどを切開せずに針で穴を広げながら挿入する「セルジンガー法」という手法で、気管カニューレを装着した。患者は、6月初旬に安曇野赤十字病院へ戻ったが、自発呼吸ができない状態が続いていたという。

 同病院によると、10日午前1時10分、気管カニューレが抜けかかっているのを看護師が発見。その時点で酸素飽和度に異常はみられなかったが10分後に悪化。担当医はカニューレの再装着を断念し、口からチューブを挿入したが、2時54分死亡を確認した。

 会見した荻原院長によると、信大が施したセルジンガー法による気管カニューレの装着は、緊急処置には向くが、いったん抜けると再び入れるのが難しい。担当医はその特徴を知っていたが、安曇野赤十字病院では処置例がなかったという。

 同病院は遺族に経過を説明。これまでに担当医も含め特別な苦情は受けていないという。荻原院長は「遺族に心よりお悔やみを申し上げ、亡くなった女性のご冥福をお祈りする」と述べた。

http://www.shinmai.co.jp/news/20070614/KT070613FTI090025000022.htm
実は自分は外科医出身なもんでセルジンガー法による気管切開は経験がない。
でも1週間以上気管カニューレが気管に留置されてれば瘻孔が形成されるだろうし、同じサイズの気管チューブは入れられると思うんだけど、再挿入は難しいのか・・・、ちょっと勉強してみよう。
でも、この記事でも気管切開の代替となる口からの気管内挿管はされてるので、それに問題が無ければ医療過誤ではないな。

ちなみに、病院が警察に届けていることは、それが即医療ミスということにはもちろんつながらない。福島の産科医の事件でも「異状死の届出をしなかったこと」が罪状になっている。だからこの病院はリスク管理を一生懸命やっている病院ということにしかならない。念のため。